前回の天然繊維の徹底解剖に続き、今回は化学繊維について解説してみたいと思います。
天然繊維以上に謎に満ちている化学繊維。
「ナイロンとポリエステルなんて似たような化繊でしょ」
「化学繊維ってガサガサした安物のカーペットの素材」
などなどなど・・・
なんとなくあまり良いイメージがない化学繊維。
しかし近年、繊維の研究は目まぐるしく進み、化学繊維と言えどその質感は天然繊維に勝るとも劣らないレベルに達しています。
また加工のしやすさや生産性から、こういったイメージを覆す便利な化繊カーペットが続々登場しています。
思いのほか長文になってしまったため、前編(天然繊維)・後編(化学繊維)に分けてまとめます。
目次
カーペットの素材と特徴を表にしてみました
化学繊維の主だった6種類の素材について表にしてみようと思います!
★ご注意★
素材によって特徴はあるものの、撥水加工や消臭・抗菌加工、防ダニ加工など、撚糸(より合わせた糸)にした時点や織り、縫製後に機能性をプラスすることも多くあります。
また織り方や毛足の長さによっても質感や扱いやすさは異なりますので、素材そのもの特性だけでカーペットの良し悪しが決まるわけではありません。
上記を踏まえて、各繊維の特徴を見てみてくださいね。
化学繊維の特徴表
素材 | 耐久性 | 汚れにくさ | 調湿性 | 価格の安さ |
---|---|---|---|---|
ナイロン | ◎ | △ | △ | |
ポリエステル | 〇 | 〇 | △ | ◎ |
ポリプロピレン | 〇 | △ | ◎ | |
アクリル | △ | 〇 | △ | |
レーヨン | △ | 〇 | ||
塩化ビニール | ◎ | ◎ |
人間が機能性や扱いやすさ、生産性を重視し生み出したのが化学繊維。
天然繊維より耐久性が高く、多機能なものが多い傾向があります。
この表には入っていませんが、価格面や染色のしやすさ などに優れており、手軽にデザイン性の高いものを手に入れることができます。
化学繊維の紹介
ここからは、カーペットに使われる代表的な化学繊維を紹介します。
ナイロン
あらゆるカーペット素材の中でも特に耐久性と耐摩耗性に優れた素材と言えます。
そのため、ホテルやオフィスなど土足での使用を見込んで選ばれることもあります。
毛羽立ちにくい反面、手触りが硬く一昔前は敬遠されることもありましたが、最近では一般家庭向けに改良されたものも出てきており、他の繊維と遜色ない柔らかい手触りのものがあります。
- 耐久性・耐摩耗性が高い
- 遊び毛、毛羽立ちが出にくい
- 化学繊維の中では高価な部類
化学繊維の中では高価ですはありますが、それを補うだけの耐久年数があるため、良いものを長く使うスタイルに適しています。
ポリエステル
化学繊維の中では一番流通しているがポリエステル。
衣類をはじめ布製品で使われていないものはない!というくらいに身近な繊維です。
- 安価で実用性No.1
- ナイロンに次いで強度があり耐久性がある
- 洗えるカーペットが多い
- 遊び毛は出にくいが、物によっては毛玉になるかも
あらゆるカーペットで使用されてるポリエステル。
他の素材との組み合わせもしやすいため、「ポリエステル〇% + 綿〇%」のように混合して使用されている場合も多々あります。
そのため手触りや風合いはまちまちで、最近ではポリエステル繊維そのものの改良が進んだことで様々な表情のカーペットが生まれています。
ポリプロピレン
ポリエステルと同様に安価でよく流通している化学繊維です。
カーペットに限って言えば、ポリエステルに次いでよく目にする素材 と言えます。
- 安価
- 摩擦に強く遊び毛が出にくい
- 水を吸いにくい
大量生産できるため、何より安価なことが嬉しい素材です。
吸水性がないため、それを利用して撥水カーペットとして仕上げることもあります。
アクリル
ウールのような風合いで、手触りも軽く柔らかい素材 です。
発色も良くほんのり光沢があり、カーペットにするにはもってこい!
- 優しい手触り
- 発色が良く、上品な光沢がある
- 耐久性自体は高いものの、毛羽立ちやすい
ただし他の繊維と比べて遊び毛が出やすいため、掃除の頻度が低いお部屋で利用される場合などは抜け毛や毛羽立ちが気になる可能性があります。
織り方や加工方法によっても抜け具合は異なりますので、アクリル製のすべてのカーペットに当てはまるわけではなく、あくまで繊維の特性としてお考え下さい。
ふんわり優しいタッチですので、肌触りに惚れ込んで購入される方が多いのがアクリル製です。
レーヨン・ビスコース
化学繊維の中でも異色なのがこのレーヨン。
他の化学繊維は石油由来が多いのに対して、レーヨンはパルプや綿を溶かして繊維にした再生繊維なのです。
と言っても日本ではあまり普及しなかったため、レーヨン素材を目にするのは輸入カーペットが多いです。
ビスコースはレーヨンになる手前の中間生成物ですが、カーペットの素材として「ビスコース」とだけ記載されている場合の多くは「=レーヨン」と考えて良いため、この章では同じものとして扱います。
- シルクに似せて作られた肌触り
- 光沢による高級感
- 吸湿性、放湿性が良い
- 他の化学繊維より耐久性は劣る
高級感漂う光沢のある繊維 ですので、他の素材とうまく混ぜてニュアンスを出すためにも使われます。
塩化ビニール
省略して「塩ビ」「PVC」等と呼ばれている、プラスチックの一つです。
敷物に加工される場合は、クッションフロアを使ったダイニングカーペットやキッチンマットがほとんどです。
- 水分が染み込まずしっかり撥水
- 毛足がないのでゴシゴシ拭ける
- 繊維につくダニなどの心配がない
- 肌触りの柔らかさはない
汚れやすいダイニングやキッチンで便利な塩化ビニール。
最近では表面の加工技術が進み、手触りをさらっとさせたり、傷つきにくくしたり、消臭抗菌防カビが強力だったりとすごい進化をしています。
まとめ
化学繊維のカーペットは、例外はありつつも、耐久性に優れ価格の面でもメリットが大きいです。
近年繊維の研究が進み、天然繊維に劣らない質感のカーペットも登場しています。
化学繊維だからと頭から敬遠せず、一度カットサンプルなどで質感を確かめてみるのも賢い手だと思います。