「ふわふわ」「もこもこ」「さらさら」
良い響きですね。
殊カーペットに関して言えば、「かちこち」「ごりごり」「ざらざら」よりずっと良い音だと思いませんか?
さらに、このふんわり感がずっと続けば言うことなしですよね?
なんだかオノマトペだらけの導入で恐縮ですが、今回はシャギーカーペットのヘタりにくさに着目して、カーペットの素材を紐解いてみたいと思います。
目次
シャギーのカーペットはすぐヘタる?
これに関して、嘘偽りなく真摯にお答えすると、私の答えは「いつかはヘタります」になります。
「すぐにヘタった!」と感じるかどうかはまず個人差のあることなので、いかんとも言い難いのですが、カーペットのシャギーが新品の状態のまま一生変わらないということはありません。ほぼ。
例えば新品のシャギーカーペットをガラスケースの中でコレクションすれば、ヘタりはしませんね。
「ヘタる」というのは、使い込んで摩耗している状態ですので、適切に密封して刺激を与えなければヘタりません。
もしくは、金属などの硬い素材でシャギーを作ればそうそうヘタるという現象は起こらないと予想できます。
でもそんなおろし金のようなカーペットで、本来の用途を果たせるのかという本末転倒な話になります。
つまり、カーペットを普通に使えば日々の摩擦や圧力がかかることにより、徐々にシャギーにダメージが蓄積されていき、「いずれはヘタります」。
使用状況にもよりますが、それを早いと感じるかどうかが焦点になりますね。
この記事ではあまり個人の感覚に左右されない部分でシャギーのヘタりにくさを比較することを主旨としたいので、繊維の素材で解説を続けてみます。
素材別ヘタりにくさランキング
同じ長さのシャギー、同じ太さ、同じ撚り方であると仮定して、シャギーカーペットの素材別にヘタりにくさをご案内します。
あくまで他の素材と比較して相対的にヘタりにくいという観点になりますので、その点ご容赦ください。
ヘタりにくさ1位はナイロン
ナイロンは化学繊維で1番高価なだけのことはあり、その耐久性はお墨付きです。
あらゆるカーペット素材の中でも、耐久性・耐摩耗性においてNo.1と言えます。
ナイロンはフィラメント糸と言って、長さのある繊維を撚り合わせて作られています。
その特性から、たとえ長毛のシャギーになったとしても、1本1本が毛羽立ちにくく、絡まりにくいため、ヘタりを感じにくいのです。
一昔前は手触りの硬さから敬遠されることもありましたが、最近では一般家庭向けに改良されたものが出てきており、他の繊維と遜色ない柔らかい手触りのものがあります。
ヘタりにくさ2位はポリエステル
カーペットに限らず、衣類などのあらゆる繊維製品に使われており身近に感じますね。
安価で大量生産が可能なだけでなく、繊維自体の強度が高く、摩擦に強い素材です。
その特性はシャギーカーペットにおいても遺憾なく発揮されますので、毛足がヘタりにくいと言えます。
最近では品質改良も進んでいますが、ポリエステルは元々剛直性が強い素材です。
そのため一度毛玉を作ってしまうと、その毛玉すら取れにくくなるという困った一面もあるので注意が必要です。
ヘタりにくさ3位はポリプロピレン
化学繊維が続いております。
名前もポリエステルによく似ていますが、特性でも共通してるのが摩擦に強いという点です。
軽くて丈夫な素材なので、シャギーになってもふわっと軽やかです。
特におすすめなのがウィルトン織りという製法で織られたカーペットで、「ヒートセット加工」が施されているものです。
ヒートセット加工はポリプロピレン糸に熱を加え、ウールのような柔らかいタッチに仕上げる加工方法です。
ヘタりにくさ4位はウール
やっと天然素材がランクインしました。
繊維の王様ウール(羊毛)です。
ウールは人間の髪の毛のように、キューティクルがあり、繊維の1本1本がコイル状にねじれています。
そのため他の繊維に比べて、弾力性が高く伸張率が非常に高い特性があります。
繊維が伸びてしまっても、しばらく待つと元の長さに戻るくらい復元力が強いんです。
この特性により、家具などでシャギーが押さえつけられても回復がしやすいのがウールです。
へたったシャギーカーペットのお手入れ
どんなシャギーカーペットでも経年劣化によるヘタりはあります。
もしシャギーが寝てしまったり、絡まってしまった場合は、一度以下のことを試してみてください。
詳しい手順に関しては、過去の記事でご案内しております。
ブラッシングをする
目の粗いヘアブラシで毛並みを立たせる方法です。
蒸しタオルなどでカーペットを湿らせて、ヘタりがある部分の毛並みを逆立てるようにブラッシングします。
毛を立たせるイメージで、少しずつブラシをかけてください。
ドライヤーを当てる
家具でへこんだ部分などピンポイントのヘタりを直す方法です。
蒸しタオルなどでカーペットを湿らせ、指先でカーペットの毛をつまみ上げ温風を当てます。
あまり高温・強風にせず、優しい風を当ててくださいね。
スチームを当てる
スチームの出るアイロンなどを使います。
温度が高くなってしまうので、ホットカーペットNG等、熱がダメなカーペットは避けたほうが無難です。
やり方は簡単で、ヘタりが気になる部分にスチームを吹きかけ、温かいうちに指で毛並みを立たせて自然乾燥させます。
アイロンでプレスしたり、3秒以上スチームを当てるのは逆効果なのでご注意ください。
シャギーの種類
シャギーにも種類があるのをご存知でしょうか?
毛足の長さでふわふわ感に違いがありそうとか、あんまり短いシャギーだと物足りないかもとか、いろいろイメージがあるかと思います。
長ければすなわちフカフカというのは間違った認識で、シャギーの種類や密度なんかで弾力感は天と地ほども変わります。
シャギーの太さ
1本1本が太めのシャギー
ファーのような極細シャギー
シャギーの束感はカーペットによって異なります。
1本1本が太いもの、ファーのように極細のもの、千差万別なんです。
太いものの方がもこもことした弾力があり抜け毛も少なめですが、束が乱れるとヘタりに繋がりやすいです。
細いものはさらさらとした滑らかな手触りで抜け毛は出るのですが、急激にペッタンコになったりはしません。
万が一ヘタっても復活させやすいです。
シャギーの撚り方(よりかた)
太さの項目と少し内容が被りますが、シャギーの毛足1本1本にもスタイルがあります。
糸の色を織り交ぜて1本の中に変化を持たせたミックスシャギーも人気です。
ツイストしているもの
ツイストあり
ツイストなし
毛を束にする際に、ツイストさせて(ねじって)ひとまとめにしているものと、そうでないものがあります。
太さの説明の写真でも片方はツイスト、片方はツイストなしですね。
ツイストしているものの方が、1本1本が太くなるので、弾力の面では優れていますが、束がほどけてくるとヘタリ感が出てきます。
カール感の強いもの
カールが強め
カールがあまりない
シャギーの中でも、繊維のツイスト(ねじり)具合によって、毛足全体がくるくると丸まっているものとそうでないものがあります。
ぐりんっと丸まってカールしているシャギーカーペットは、底つきを感じにくく、指に絡まるようなもじゃもじゃした触感になります。
それに対して、あまりカールのないものの方は毛足が長く見えるので、ぱっと見のボリューム感はこちらのほうがあります。
底つきの感じにくさは、毛の密度に左右されます。
ヘタりにくさは甲乙があるわけではないのですが、カールが強めのカーペットの方が毛が寝てしまっても違和感が少なく、そういった意味ではヘタりにくいと言えるかもしれません。
シャギーの長さと密度
これだけシャギーの話をしていて、長さの案内が最後なんかい!と思った方、多いかもしれませんね。
シャギーと言えば長さでしょというのは、あながち間違いではないのですが、一番誤解が生まれているのもこの毛足の長さについてだと思うんです。
なんとな~くの先入観でこんな風に思っていませんか?
「シャギーが長ければボリューミーでふかふか」
「シャギーが短いとペッタンコでぺらぺら」
カーペット専門店に入社する前は私もこんなイメージを持っていました。てへ。
この考えは間違いではないのですが、いわゆる「ふかふか」「もこもこ」みたいな触感や踏み心地に起因する感覚は、シャギーの長さだけでは決まりません。
毛が短くても密度が高ければしっかり体重を受け止めてくれますので、踏み心地は「ふかふか」と弾力を感じます。
毛が長くても密度が低ければ、毛が寝てしまってスカスカになり、なんだか硬い踏み心地。
実のところシャギーラグを購入する際に重要なのは、毛の長さより毛の密度と言っても過言ではないんです。
密度の高いシャギー程毛が寝にくい為、ヘタりにくさを重視する場合も毛の密度が高いほうが良いと言えます。
シャギーの密度を知るには
カーペットの毛の密度は「目付量(めつけりょう)」という数値で知ることができます。
しっかり目付のあるシャギーカーペットなら、そこが売り文句になるので、記載されていることが多いです。
一般的な目付量は400g程度です。
目付量 3000g/m2の最高クラスシャギーラグ
目付量 1700g/m2の高密度ラグ
短毛タイプ
シャギーと呼んで良いのか分かりませんが、とにかく毛が短いものをご覧いただきます。
手で撫でたとき毛の長さこそ感じにくいですが、目付量や加工により十分にふかふか感があります。
中綿やウレタンと組み合わせることで厚みを出す場合もあります。
短毛のフランネルタイプ
ギャッベという高密度の手織りタイプ
ミドルシャギー・セミロングシャギー
ロングというには短めなシャギーです。
ロボット掃除機を使う場合などは、このくらいの毛足が限界かなと思います(機種によります)。
見た目のシャギー感はありつつも、毛足が程々なのでお手入れがしやすいタイプと言えます。
ロングシャギー
シャギーの中のシャギーと言えば、やっぱりロングタイプです。
長毛が織りなす毛並みはゴージャスで高級感があります。
まとめ
シャギーカーペットのヘタりにくさは、加工や使い方にもよりますが、素材選びから気を付けておくとストレスを軽減できます。
シャギー感を長持ちさせたい場合に特におすすめできる素材はナイロンです。
経年によりヘタってしまったシャギーには、ブラッシングやドライヤー・スチームなどでお手入れをすることができます。
できるだけヘタりにくいシャギーカーペットが欲しい場合は、毛の密度にも注意して目付量の多いものを選ぶと毛が寝にくいです。